ロンドン在住ヴァイオリニスト・小町碧が様々な音楽活動をはじめ、英国の音楽や作曲家のエピソード等を連載。

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念願のグラインドボーン!

 
最も伝統的なイギリスのオペラ音楽祭と言えば、グラインドボーン。
「いつか行ってみたいなぁ」とずっと憧れていた場所なのですが、今年の夏は、英国在住14年目にして、遂に初のグラインドボーンを体験することができました!
 
オペラの素晴らしい演出はもちろん、それを鑑賞するまでの一連の過程も、この音楽祭の最大の魅力です。
 
ロンドンから電車で1時間、イースト・サセックス州・ルイス近郊のグラインドボーンは、クリスティー家所有のカントリー・ハウスの名前。1934年に、この敷地の所有者であったジョン・クリスティーが、ソプラノ歌手で妻のオドリー・ミルドメイのためにオペラハウスを建てたことがきっかけで、音楽祭も同時に創設されました。
 
クリスティー氏は当初、家のオルガン・ルーム(写真・下)を拡大し、小さな演劇場を建てる予定でしたが、妻のオードリーにとってはそれは中途半端で、全か無かの選択だったようです。
「ジョン、お願いだから、どうせお金を使うのだったらちゃんと使わないと!」と言う彼女の強い押しに影響されて、最終的には300席のオペラ・ハウスがオルガン・ルームの隣に建てられました。
さすがオードリー、一分の隙もなく繊細なグラインドボーンのディテールは、彼女のこの発言から来てるのだなぁ・・・と納得。
 
当初は奥の小さな扉(写真・下)が、オペラ・ハウスへの入り口だったそうです!
 
ジョン・クリスティー
 
この音楽祭は、元々個人所有の音楽祭のため、驚くことに、殆ど会員の寄付によって運営されてきたそうです。会員になるとチケットが優先的に予約できるのですが、あまりの人気で、会員になるにも順番待ち。今回グラインドボーンを案内してくださった知人も、正式な会員になるのに30年も待ったそうです!
 
そしてグラインドボーンの敷地を散歩した後には、ピクニックの時間。
専用のバスケットとテーブル、椅子が用意されていて、好きな場所までスタッフが持ってきてくれます。本当は、庭でピクニックするのが習慣なのですが・・・なんとあいにくの雨!なので、オルガン・ルーム手前の、屋根のある場所を選びました。
 
それでは、ちょっと寒いけど、ピクニック・タイム!

このピクニック・セットは事前に注文しておくのですが、中身も全てイギリスらしいメニュー。ヤギチーズとイチジクのタルト、トマトとロースト・ポテトのサラダでした。
 
地元産の食材と飲み物を使用するのもグラインドボーンの伝統。
初めて見たブランド、「cloudy apple juice (濁ったりんごジュース)」を飲んでみたら、そのお味は・・・すっぱい(笑)!
何もかも、イギリスらしい魅力満載です。
 
そして待ちにまった開演時間。
辺りはタキシードとドレス姿の音楽愛好家達で賑やかになり、皆揃っていよいよオペラ・ハウスの中へ。
現在のオペラハウスは、90年代に改装されて1200席まで拡大されましたが、この新しい木造の設計には、満席になっても空席の時とほぼ変わらない、こだわりの音響効果があるそうです。
 
さて、ここでやっと音楽の話になりますが、今回上演されたベルリオーズ作曲の「ベアトリスとベネディクト」、この作品にもイギリスとの繋がりがあります。今年は、シェイクスピア没後400年を記念して、グラインドボーンではシェイクスピアの劇を題材にしたオペラが取り上げられました。「ベアトリスとベネディクト」はシェイクスピアの「空騒ぎ(Much Ado About Nothing)」を基に、ベルリオーズ自身がリブレットをフランス語で書いた作品です。
 
大きな白い箱が積み上げられた質素な舞台に、幻想的な音楽、そしてストーリーはイタリアと言う設定のはずなのに、言語はフランス語。一瞬どこの国にいるのか分からなくなるくらい、架空の世界へ惹きこまれました。
 
箱から飛び出す登場人物は、まるでおもちゃ箱から現れる操り人形。
演出家、ロラン・ペリーによる、新しい発想がたくさん詰まったプロダクションでした!
 

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